【はじめに】
会社で仕事をしていると、営業用のプレゼン書類や決裁の稟議にかけたい書類など、様々な種類の書類を作成することになります。それらの書類は社内に蓄積された情報やインターネットから得られる情報を活用しながら作成することになりますが、いざ関係者や上司にレビューを依頼すると思わぬ指摘をされることも多々あると思います。
また、相手が忙しい場合、すぐに資料の相談やレビューをしたくても難しいシチュエーションもあります。
昨今では、生成AIを活用し、ある程度整った資料雛形を作ることも可能ですが、やはり個々の会社、部門の文化、上司の考え方まで汲み取ったアウトプットを出すことは難しいです。
当社のR&D部門ではこのような課題を解決できるように、生成AIに簡単に実在の人物の意向や発言を疑似的に再現するサービスである『AI人格』を研究・開発いたしましたのでご紹介します。
【「AI人格」の特徴】
当ソリューションは生成AIにモデルとなっている人物の発言や作成資料を、RAG技術を活用して参照することで、より「その人らしい」回答を生成できるようにしています。
その特徴には以下の4点があります。

■Point1 : 容易に人格作成が可能!
- 人格を作成する際に必要なのは、一人称・口癖・出身地などのプロフィール情報を記載したファイルと、その人の発言内容・作成した資料のみで、手軽にAI人格を増やせます。
■Point2 : 高精度の人格再現!
- 実在の人物の発言や、その人が作成した資料をDB化して参照することにより、高精度で人格(心理的特性や人柄、思考や感情を含む、その人全体の特徴)を再現します。
■Point3 : 回答の根拠が確認可能!
- 回答の根拠をユーザーが確認できるよう、参考となったエビデンスを提示します。
- 根拠となる資料がなかった場合には、その旨を注意書きにてユーザーに知らせます。
■Point4 : 時間感覚アリ!
- 従来のAIチャットボットは、質問文に明確な日付情報が含まれていない場合、時間的な感覚を正確に把握することができませんでしたが、相対的な時間感覚を持って質問に応答することが可能です。
例:質問文に「今年」と入れた場合
参考情報検索時に、情報参照元ファイルの更新日時範囲を指定。
「今年」=「2025/01/01~2025/12/31」に更新されたドキュメントから情報が検索され、回答文が生成されます。

【ユースケース① 社内での事前レビューへの活用】
上司の「AI人格」にレビューを依頼し、現状の課題を解決します。
As Is|現状の課題 | To Be|「AI人格」を活用すると? |
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・上司が多忙で、レビューの時間がなかなか確保できない……。
・何度も修正が必要となり、上司を巻き込んでレビュー工数がかさむ……。 |
・上司の「AI人格」を相手に、指摘がなくなるまで壁打ちレビュー。
・上司本人の本番レビューは1回きりでOK&1発クリア! 工数の大幅削減に! |
例:社内文書の事前レビューで活用
レビュワーと文書種別を指定してファイルをアップロードすると、レビュワーの「AI人格」が資料レビューを行ってくれます。

①レビュー対象の資料をアップロードします。

②レビュワーの「AI人格」がレビューし、コメントを表示します。

■レビュワーを増やしたい場合に必要なインプット
- その人のパーソナリティ。(プロフィール情報、キャラクター設定等が書かれた人格ファイル)
- その人が過去に対象種別の資料に対して発言したことを文章化したもの。(レビュー観点)
■チェックできる資料を増やしたい場合に必要なインプット
- チェック対象のガイドラインを記した資料。(要記載事項、規程など)
【ユースケース② アイディエーションへの活用】
複数の「AI人格」を駆使すると、多彩なアイデアを創出&ブラッシュアップすることができます。
例:ペルソナとして複数の女性社員の 「AI人格」 を作成
複数のAI人格にアイデアや意見を募り、企画内容のレビューなどを担当させます。
■必要なインプット
- 各社員の日々の発言をテキスト化したもの。
- 各社員のプロフィール。(好みや趣味、ライフスタイルに関する情報など)
■メリット
- 時間や業務調整を必要とせずに、大勢の社員の意見を集めることができます。
- 全員の予定を調整して会議を開く必要がなく、手軽にアイデアを収集できます。
- AIはレビュー時に忖度をする必要がないため、率直な意見が得られます。
【ユースケース③ 営業アシスタントとしての活用】
営業担当者が自身の「AI人格」をアシスタントとして活用することで、営業活動のクオリティUP&円滑化を実現します。

■メリット
- 質の高い顧客対応を実現でき、お客様の満足度の向上が期待できます。
- 生身の人間では訊きづらい内容 (お客様の課題感など) のヒアリングを、AI人格を介したコミュニケーションで円滑化することができます。
【さいごに】
生成AIの注目度がますます高まる中、私たちは「人格」という切り口から新たな可能性を探求しています。
今回は、実在の人物の思考や感性を再現する「AI人格」技術と、その活用シーンをご紹介しました。
イベント企画や営業支援、社内レビューなど、業務の質と効率を高める手段として、「AI人格」は大きな可能性を秘めています。
今後は音声・映像対応やデジタルヒューマン化など、さらなる進化を目指して開発を進めてまいります。
少しでも皆様の業務や発想のヒントになれば幸いです。
クロスイノベーション推進センター 先進技術研究開発部
井上 詠治
Edge IoT事業部 戦略企画室
井川 彩水
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