2020年7月3日
製造業向けIoT導入手法のご紹介④
鵜川 裕文 エグゼクティブスペシャリスト/センター長
ハードウェアを選定する
こんにちは、株式会社NTTデータSBCの鵜川です。
前回から非常に時間が開いてしまいました。大変申し訳ございません!
当社も新型コロナウイルス対応で全員テレワークとなっておりましたが、アフターコロナの「働き方」について議論しているところです。
- テレワークでも工夫をすれば業務に支障は出ない
- 遠隔の人に物事を伝える能力が向上する
- 「満員電車」は体力・気力を奪う
なかなか変えることができなかった日本の働き方もこれを機に、前向きに変わって欲しいですね。
前回は「ネットワーク設計をする」まで進めました。以下にまとめます。
- 【目的】ベルトコンベアの稼働状況を1時間に1回確認している手間を省きたい
- 【センサー】振動センサーを利用する
- 【ネットワーク】無線LANを利用する
今回は、「ハードウェアを選定する」ところから始めたいと思います。
「つなげる」のステップ
センサーハードウェア選定
無線LANで「お手軽」に使える振動センサーはない
各社様、さまざまなIoTソリューションを提案されていますが、無線LANで気軽に使える振動センサーは少ないです。
(最近は、電池にて連続稼働8時間、1日1回10秒間稼働で1年間動作するような製品は出てきています。今回の目的には少し合いませんね)
という訳で、「ない物は作る」ことになりました。
- 【ハードウェア製作の目標】
- あらゆるセンサーデータを簡単に無線で取得したい(ソフトウェア書き換えで新たなセンサー追加可能に!)
- 充電池でも乾電池でもコンセントでも動くようにしたい
- 長時間稼働しても壊れにくいハードウェアにしたい(高耐久部品、防湿基盤の採用など)
というわけで、「かっこいいやつ」できましたよ!
SBConnect MST (Multi Sensor Terminal)
いろいろなセンサーが簡単につなげられます(手作り感あるNH3センサーは試作段階の物です)
「センサーハードウェア選定をする」といいながら作ってしまいました。
ちなみに、このセンサーボックスとセンサーは、我々が取り組んでいる「スマート養豚プロジェクト」向けに試作し、1年以上かけて量産に取り組んだ物です。今でこそかっこいいボックスに仕上がっていますが・・・・・・。我々ソフトウェア専門だったメンバーが1から開発に挑んだため、下記のように何回も試作を繰り返すことになりました。おかげさまで、当初の目標を達成し、今では「さまざまなセンサー」に対応ができています。
たくさん作った試作機たち
今回利用するセンサーは、「振動(加速度)センサー」です。ADXL345を利用しました(当然パッケージングしてありますよ)。
ネットワーク機器を選定する
利用するWi-Fi バックホールアクセスポイントとしてシャープ株式会社のQX-C300を選定しました。
選定理由は「Wi-Fiバックホール接続」です。
通常Wi-Fiを導入する場合、アクセスポイントから先の接続は有線接続になります。
バックホール接続方式は、この部分に有線を引かずに無線で対応できることが大きな特長です。また、メッシュ接続にも対応していますので、柔軟かつ拡張性のある方式として注目されています。家庭用に最近発売されている「メッシュWi-Fi」との違いは、アクセスポイント用の電波とは別の周波数を専用に利用することです。お値段は少々はりますが、将来の拡張を考えた場合、良い選択だと考えています。
今回は、
- QX-C300を2台(事務所用、現場用)、専用アンテナを送信用3本、受信用3本
- 事務所のPCと接続するためのハブを1台 Dell社 X1008Pを選定
- LANケーブルはカテゴリ6以上のケーブルを2本(ケーブル長に注意。長すぎてもかさばりますし、短いと接続できません)
- リモートで動作確認や保守を行う場合は、別途回線契約、ルーターの購入などが必要
上記を提案させていただきました。屋外に設置する場合などは追加でいろいろ考慮が必要ですのでご注意ください。
この構成の場合、多数のネットワークカメラを設置するなどの将来の拡張にも対応できます。家庭用の機器を選定するのはご法度です、迷わず業務用機器を選びましょう。
※決して家庭用の機器がダメだと言っているわけではありません。
有線バックホールと無線バックホールの違い〈シャープ(株)商品ページより〉
サーバーを選定する
サーバーを選定するにあたって、今回の目的を再確認します。
- 【目的】ベルトコンベアの稼働状況を1時間に1回確認している手間を省きたい
- 【センサー】振動センサーを利用する
- 【ネットワーク】無線LANを利用する
PoC(概念実証)ですから安くすませたいですよね?
あるタイミングで稼働しているか、していないかを振動で記録する程度であれば、「ノートパソコン」で十分です。
「ノートパソコン」のメリットは、なんといっても「電源」です。UPSなどを導入しなくてもバッテリーがついていますからコンセントが抜けてもしばらくは動いてくれます。
次回は「ソフトウェア構成の設計」「現場と設置時期の調整」を行っていきます。お楽しみに。
商標
- Wi-Fiは、Wi-Fi Allianceの商標または登録商標です。
- QX-C300は、シャープ株式会社の商品名です。
- X1008/Pは、DELL株式会社の商品名です。